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日本メーカー発の極細マイクロニードルが世界へ羽ばたく!

[ 2016/8/1 ]
ヒアルロン酸やボトックス注入の際、薬剤を皮内へより広範囲に拡散させるために、通常の注射針ではなくマイクロニードルのひとつであるマルチ針「パスキン」を利用する病院、クリニックが増えている。美容医療機器と言えばアジアやヨーロッパなど海外製が多い中、パスキンが、実は国内のメーカーによって開発された商品であることを知らない医師も多いかもしれない。今回は、マイクロニードル技術によって痛みやダウンタイムを最大限に軽減し皮内に薬剤を拡散することができる、厚生労働省認証の医療機器パスキンについて取り上げる。

美容医療を取り扱う病院、クリニックであれば、ヒアルロン酸やボトックスの注入治療は必ず一度は必ず行ったことがあるほどにメジャーな治療であろう。そしてこのヒアルロン酸・ボトックス注入の際に、出来るだけ痛みや内出血を軽減する治療機器として現在600以上の病院、クリニックで導入されているのがマイクロ針を使用した「パスキン」だ。パスキンには31Gと34Gの2種類の細さの針があり、さらに用途によって使い分けができるよう、1本針パスニーのシリーズが製品化されている。また針出寸法Lが11.5㎜から3.5㎜まで3つに分かれており、皮内注射の用途や手技にあわせて選択することができる。
このパスキンの製造元は、国内外の大手自動車メーカーをはじめ、家電、建築、照明、医療機器など様々な分野にプラスチック製品やその金型の設計・製造を行っている南部化成が開発している。同社は3年前に新しくマイクロ注射針パスキンを販売開始し、ここではじめて美容医療業界へと参入したという。販売当初は拡販に難航することもあったが、純国産で且つ、厚生労働省認証機器ということもあり、現在では多数の病院、クリニックが導入し治療機器として利用している。

パスキンの開発経緯をたどると、発売よりも7年ほど前の2006年にまでさかのぼる。同社本社がある静岡県で産学共同研究の依頼を受け、迅速に皮内注射ができるプラスチック製注射針の開発・研究を県内の大学医学部とスタートした。 
当初はワクチン注射などを使用目的として開発を行っていたが、国内での許認可の申請・取得等の作業に大幅な時間を要するため、一時は商品化が難しいのではという判断からプロジェクトが数年ほど保留となる時期もあったが、その後も注入部位からスムーズに皮内へ拡散する針を開発するために、様々な大学機関とも連携し研究を進め、さらに形成外科医、美容皮膚科/外科医などから実践的なアドバイスをもらう中で、より顕在的なニーズがあり、さらにスピーディに商品化できる美容医療機器としての商品開発に舵を切る。
ヒアルロン酸やボトックス注入は多くの病院、クリニックで行われていたが、患者の痛みを軽減し内出血なども少なくスピーディに注入できる手法として、同社が開発した3本針で皮内注射をすることができるマイクロニードルの技術が、ここで注目されることになる。
医師や看護師の手技によることなく、皮内の浅い部分により広く薬剤を注入することができるパスキンは次第に医師の間でも評判を呼び、さらに今年はボトックスによる腋窩多汗症の保険診療点数が大幅に改善したことによって、より多くの病院、クリニックから引き合いが来ているという。
また同商品は、日本の医師ほど細かな作業をあまり得意とはしない海外においても需要が高く、アジア、ヨーロッパなど幅広い国々で採用が進んでいるという。更にここ最近は、北米、南米、中東等のより幅広いエリアからもオファーが来るようになった。
南部化成では今年5月から、パスキン/パスニーとあわせて使用できる1ccシリンジの製造・販売をスタートした。パスキンは針が34Gと極細のため、通常のシリンジで注入すると針が飛んでしまう可能性があり、医師が結合部を抑えて注入するなどをしなければならなかったが、同社が製造したシリンジはルアーロックタイプのため針を固定して確実に注入することができる。さらに持ち手の手掛け部分が回転式となっており、角度や向きを気にすることなく注入することができる。またローデッドスペース設計により、薬剤を残さずに最後まで注入できる機器になっている。
同社が美容クリニックに提供する機器は、いずれも使用する治療法が限られるため大量生産には向いていない商材だが、同社メディカル営業部 部長稲生氏は、「患者さんにとって痛みやダウンタイムが少なく、しかも先生方にとって効率的で使いやすいものを作り続けたい。ニッチでも、現場でニーズがあるものを開発していくのが当社の方針です」と話す。
30年以上続く製造メーカーとしての「作り手魂」を感じると共に、今後も患者と医師のニーズに合致した、日本ならではの新しい医療機器の開発にぜひ期待したい。
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