JAASアカデミー
TEL
お問い合わせ
一般社団法人 JAAS日本アンチエイジング外科学会

JAASアカデミー

一般社団法人 JAAS日本アンチエイジング外科学会

TEL

お問い合わせ

「美肌菌」で美容皮膚再生 長崎のバイオジェノミクス

[ 2016/6/17 ]
2001年頃からNHKなどのテレビ番組や雑誌で取り上げられたのが、「洗わないずぼら美肌」。肌の常在菌を必要以上に洗い流さずに美肌を維持するという美容法だ。長崎に本社を置く株式会社バイオジェノミクスでは、2013年から「美肌菌」を活用したスキンケア商品「美肌菌バンク」を提供している。美肌菌とは表皮ブドウ球菌を指し、数ある皮膚常在菌の中でも健康的な肌を作る細菌だ。美肌菌バンクでは、自身の額から皮膚常在菌を採取し、その後専用の施設で美肌菌のみを培養して凍結乾燥法(フリーズドライ)でパウダー状にしたものを再び肌へ戻すという仕組みだ。美肌菌は角質層に存在しており、皮脂や汗を餌として保湿成分(グリセリン)や有機酸などを産生し、肌を健やかに保つ働きがあるという。長崎県にある同社取締役営業部長の田中康裕氏に話を伺った。


表皮には1兆以上の皮膚常在菌が存在するが、その中でもアトピー性皮膚炎等を発症させると言われているのが黄色ブドウ球菌(悪玉菌)だ。 それに対して、美肌菌(表皮ブドウ球菌)はこの悪玉菌の働きを抑制して抗菌ペプチドを産生し、皮膚の健康状態を保つ働きがある。さらに肌のバリア機能強化、抗炎症作用、保湿、有機酸の産生など美肌へとつながる様々な役割に担っているという。 バイオジェノミクスは、25年ほど前から乳酸菌生産物質の製造を行っており、微生物に関しては長きに渡って研究・開発を行ってきた。乳酸菌生産物質は、乳酸菌によって作り出された発酵代謝産物であり、腸内フローラを介さず直接作用することができる「バイオジェニックス」という新しいカテゴリに区分され、既存の「プロバイオティクス(生きた菌)」、「プレバイオティクス(腸内細菌の餌)」には属さない新しい物質である点が特徴だ。 この画期的な原料を元に同社では、産学共同プロジェクトとして長崎県内の食品製造業者や大学と連携し様々なサプリメントや加工食品を生み出している。 そんな中、同社の乳酸菌生産物質を含有した食品を摂取すると肌の調子がよくなるという声を聞くことも多く、また具体的な研究前ではあったものの乳酸菌生産物質における肌への有用性についてはほぼ確信できていたこともあり、改めて美容分野での研究・開発を行うことになった(田中氏)。 開発・研究にあたっては、皮膚常在菌の権威である東京女子医科大学・皮膚科の出来尾先生や、常在菌の有用性について長年研究を行っている長崎国際大学・薬学部の榊原先生や野嶽先生と共同研究を行い、自身の美肌菌を採取し培養、凍結乾燥粉末にして肌に戻すという画期的な完全オーダーメイドのスキンケア製品の開発に成功した。 使用方法はごく簡単だ。専用の美肌菌採取キットによって自身の額から皮膚常在菌を採取して同社へ送付する。到着後は専門の研究スタッフが採取した菌から美肌菌のみを抽出・培養し、1本のバイアル瓶に約10億個の美肌菌を入れて凍結乾燥粉末(フリーズドライ)にする。凍結乾燥によって仮死状態となった美肌菌に、その後化粧水などで水分を与えると肌の上で活動を再開するという手法だ。 採取した美肌菌はマイナス80℃で半永久的に凍結保管することができる。その後は顧客から要望があった際に当時凍結保管した美肌菌を粉末加工し、発送する。これによって半永久的に自身の活性化した美肌菌を保管することができる。 美肌菌の効果については様々な専門誌に論文を掲載しており、2013年「Subacute toxicological analysis of excessive」(J. Cosmet. Dermatol. )、同年「自分の皮膚常在菌”を活用した新規スキンケア法の開発」(フレグランスジャーナル)、2014年「乳酸菌生産物質の機能性と基礎化粧品への応用」(同)などが挙げられる。 また学会等でも積極的に発表を行っており、直近では2015年「美肌菌戻し法による皮膚上の物質変化とスキンケア効果に関する分析研究」(第32回日本薬学会 九州支部大会(延岡))、2016年「自分の美肌菌を活用した新規スキンケア法(美肌菌戻し法)の構築」(第6回化粧品開発展Cosme Tech 2016(東京))などだ。 同社の技術は日本・韓国において特許を取得しており、現在はさらに中国でも特許出願中だ。同様の技術を持つ企業は、アジアでもほぼない。 「美肌菌の採取6か月の美肌菌戻しキットの提供・保管料などを加えると使用料は60万円弱となりますが、アンチエイジングや美容に意識の高い女性を中心に多くの注文が来ています」と田中氏はいう。  同商品は現在エステサロンなどで注文することができるが、エビデンスの豊富さやサービスの質の高さ、さらに価格等を鑑みると、今後は美容医療分野でも注目される可能性が大きいと考える。 編集部としても今後の同社商品の動向を引き続き調査していきたい。
Copyright (C) JAAS ACADEMY. All rights reserved.