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オイスター研究成果MSDに論文掲載される

[ 2016/4/17 ]
一昨年、昨年と日本睡眠学会学術集会で研究発表を行い、参加者からひときわ高い関心を集めた渡辺オイスター研究所のもとに昨秋、ある依頼が舞い込む。第39回日本睡眠学会学術総会で「ベストプレゼンテーション賞」が授与され、多くの研究者、医学者からその名声が鳴り響くことになった同社・渡辺 貢代表(医学博士、畜産学博士)に思いもかけない投稿依頼をしてきたのは、誰あろう分子免疫学の第一人者・本庶 佑博士本人だったというから驚く。毎年ノーベル賞候補に挙げられるほどの著名な博士だが、京大医学部医化学の教授職の傍ら、生命医化学の学術誌サイエンス・ダイジェスト(MSD)の編集主幹を長年務めてきたことでも知られる。その学術誌への研究論文発表を本庶博士直々に渡辺代表宛て依頼してきたわけだ。そして10月号(2015年41巻・通巻542号)に掲載された。掲載論文は「マガキ軟体部エキスから同定された新規抗酸化物質3,5-dihydroxy-4-methoxybenzyl alcohol:脳移行性とヒトの睡眠に与える影響」である。本稿ではダイジェスト版として掲載したい。


概説 マガキ軟体部エキスから低分子かつ両新媒性の新規抗酸化物質3,5-dihydroxy-4-methoxybenzyl alcohol(DHMBA)を同定し、ラット血液脳関門(BBB)再構成モデルを用いたin vitro試験と、マウスへの経口投与後のLC-MS/MSを用いた測定試験により、本物質の脳内移行性を確認した。次いでマガキ軟体部エキス由来の本物質含有分画をヒトに投与し脳波測定により有意な中途覚醒抑制作用を認めた。 はじめに 本試験では、DHMBAの脳内移行性をラットBBBキットを用いたin vitro試験により検討し、さらにDHMBA含有分画のヒトの睡眠に対する影響を検討した。

方法 1)ラット型BBBキットを使用し、Tight junction細胞間隙輸送能の標準物質としてのFluorescein-Naと試験対象物DHMBAの透過係数を算出した。 2-1)C57BL/6NCrSlc雄性マウス(9週齢、平均体重21±1g)を用い、摂食(固形飼料CRF-1)と飲水は自由摂取として7日間の予備飼育を行い馴化した後、DHMBAの投与前に16時間の絶食を行った。動物実験は、筑波大学実験動物委員会の審査を受け、その承認を得た後に実施した。 2-2)DHMBAを純水に溶解(30㎎/ml)し、マウス用経口ゾンデを用いて体重20g当たり0.2mlを経口投与した。血漿を採取後10%trichloroacetic acid(TCA)による除タンパクを行い、遠心分離後の上清を-80℃にて凍結保存した。採血後、直ちに断頭して脳を摘出し3倍量のPhosphate Buffered Salineを加えてポリトロンにてホモジネートを調整した。次いで熱処理(100℃、5min)と、10%TCAによる除タンパクを行い、遠心分離後の上清を-80℃にて凍結保存した。 3)血漿と脳中のDHMBA濃度は、液体クロマトグラム/タンデム質量分析装置を用いて定量した。定性分析には、Q1スキャン、プロダクトイオンスキャンを用いた。定量分析にはエレクトロスプレーイオン化法を用い、多量反応モニタリング(MRM)を用いた。 4)対象者はアテネ式不眠尺度(AIS)が6点以上で、週に複数回の中途覚醒を自覚する勤労者男女28名(44.0±7.2歳)を選択し、被験飲料(DHMBA含有量0.37㎎)とプラセボ飲料を一日1本(50ml)二重盲検プラセボ対照比較試験にて4週間連続摂取した。その間、AISによる主観的評価と携帯型脳波計を用いた睡眠時脳波による客観的評価にて被験飲料の睡眠に与える影響を検討した(なおAISの評価方法として、事前検査時のPOMS-短縮版の抑うつが解析対象者の中央値59点未満13名を対象に解析。脳波の解析可能なデータが2日間未満の計8名は解析から除外されている)本試験は、(医)健昌会倫理審査委員会の審査を受けその承認を得た後に実施した。 結果および考察 BBBキットによるDHMBAの透過係数測定では、DHMBAの全平均Papp値は4.1±0.7×10-6㎝/sであり、Fluorescein-Naと同レベルの脳内移行性を持つことが明らかになった。 また、DHMBAの定量分析においては、DHMBA標準品の濃度範囲1~1000ng/mlにおける検量線の相関係数Rは0.9998であり、1ng/mlでの面積値再現性は相対標準値差が9.68%であり、良好な再現性が得られた。 血漿中半減期と脳移行性においては、経口投与10分後の脳の1000倍希釈試料のMRMクロマトグラムから保持時間4.4~4.6分の範囲にDHMBAの単一のピークが検出され、脳中濃度は92.6μg/g wet weightであった。さらに、投与10分後の血漿と脳からDHMBAが検出され、in vitroにおけるDHMBAの消化管吸収性と脳移行性も確認された。 こうした結果から求めたDHMBAの血漿中半減期は12.4分、脳中半減期は28.9分であり、DHMBAの脳中半減期は血漿中半減期に比べて2倍以上長いことが明らかになった。 一方、被験飲料のヒト睡眠に与える影響についても、DHMBAが有用な改善作用をもたらすことが示された。被験飲料群のAISは摂取前の10.6±2.9から4週目の4.9±2.0へ群内で有意に低く、また4週目の被験飲料群の得点4.9±2.0はプラセボ群の8.8±4.4より群間でも有意に低かった。これにより被験飲料群のAISは6点以下になり有意な睡眠改善作用が認められる。 脳波測定による客観的な睡眠評価でも被験飲料群では中途覚醒の増加が抑制されたことを示している。 中途覚醒時間の割合を解析した結果、プラセボ群で摂取開始時6.0±2.0%から4週目で8.5±4.3%と有意に増加したが、被験診療群では摂取開始時から4週目まで有意な変化は生じなかった。4週目の群間比較でもプラセボ群の覚醒時間の割合(8.5%)は、被験飲料群(5.2%)より有意に高値を示している。 結語 1)BBBキットを用いたin vitro試験によりDHMBAの脳内移行性を確認した。 2)DHMBA投与前の血漿と脳にはDHMBAは検出されず、DHMBAはマウス生体内に存在しないことが示された。 3)DHMBAの経口投与10分後の血漿と脳からDHMBAが検出され、DHMBAの消化管吸収性と脳内移行性が確認された。 4)DHMBAの血漿中半減期は12.4分であり、脳中半減期は28.9分であった。 5)マガキ軟体部エキスのDHMBA含有分画を主成分とする被験飲料による有意な中途覚醒抑制作用が睡眠時脳波測定により検知され、有意な睡眠改善作用がAISによって示された。

渡辺 貢(1)福嶋 和代(1)三木 恵美子(1) 有竹 浩介(2)裏出 良博(2) (1)株式会社 渡辺オイスター研究所 (2)筑波大学 国際統合睡眠医科学研究機構(WPI-IIIS)
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