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韓国美容医療に逆風止まず

[ 2014/9/10 ]

美容整形の牙城に暗雲が
BeforeAfter写真など過剰広告に規制入る

16面写真-競合激化にある江南韓国ソウル市当局は、美容整形の広告に対して規制のメスを入れる。市当局が管轄する市営地下鉄の駅構内に掲示される広告物を当面ターゲットに置き、全広告のうち「美容整形」に関わる宣伝物を20%以下に抑える。とりわけBeforeAfter写真など内容にも検閲が入る見込みで、写真の信ぴょう性をチェックする方針だ。背景には、国内需要もさることながら中国などからの医療ツーリズムによって、集患のためにクリニック間の宣伝合戦が激しさを増し、勢い「過剰で扇情的」な広告内容が目立つようになっているとしている。「市民に美容整形を煽り、広告によって容姿の善し悪しを限りなく脅迫するようなケースが増えている」と、取締に対してその姿勢は厳しい。ただ、術前術後写真などネットによる医療広告の規制にはいまのところ至っていない。

美容整形大国としてその牙城をアジアのなかで死守し続けている韓国のなかで昨年から、逆風が吹き荒れている。医療ツーリズムを政府あげて推進してきた結果、そのツケが回ってきた感は否めない。
症例件数の多さからとくに侵襲性の高い美容整形の技術は日本にもひけを取らず、その割には治療費は安い。こうしたことから韓国には、中国や東南アジアさらには中近東の富裕層たちがこぞって押し寄せる。先ごろ発表された世界の美容整形手術の統計値によれば、韓国(韓国国内および海外患者)は人口1000人あたり13.5人の割合で治療を受け、世界No1の受診率を記録するが、中でも海外からの患者は増加の一途だ。この数年で、美容整形を目的に訪れた海外からの患者は5倍ともいわれている。国内需要と同じように海外患者のニーズでも「眼瞼」「鼻」「唇」が上位3傑を占め、4位から「顎」「胸」「背」「傷跡」「エクボ」「脂肪吸引」「皺」と続く。

そして韓国美容整形の最大の魅力が治療費であることはいうまでもない。二重瞼(切開)11~14万円、同埋没法9~11万円、下眼瞼脱脂9~11万円、鼻尖形成14~16万円、隆鼻11~14万円、鷲鼻矯正18~27万円、口唇ヒアルロン酸注入7~14万円、豊胸46~55万円、バストアップ36万円、陥没乳頭治療9~14万円、脂肪吸引27~45万円、へそ整形14万円、大腿部脂肪吸引32~45万円、ふくらはぎ痩身23~27万円、両顎修正120~136万円と日本に比べ治療費は圧倒的に割安だ。

しかし一方で、医療事故、クレームが絶えないのも事実で、中国など海外からの患者がトラブルに巻き込まれるケースも少なくない。2面でも報じたとおり、侵襲性の低いヒアルロン酸注入でさえ、失明事故が起こっており、「報告されていない有害事象は相当ある」と先の症例報告をした仁済大の眼科医師は警鐘を鳴らすほどである。
医療事故を隠蔽しながらも宣伝合戦に明け暮れる一部のクリニック(もちろん高い技術と安全性を担保した良心的な美容形成クリニックは韓国にも多い)にとって、もう一つ向かい風になった事情がある。
海外需要を取り込むため韓国政府の医療ツーリズム政策によって、業界への保護政策の一つが、治療収入に対する非課税の恩恵だった。しかし、今年春、いわゆる「ぜいたく税」とも言われる付加価値税が導入され、すべての「美容医療」に対して10%の課税を課すことになった(本紙113号既報)。2011年7月から課税対象とされてきた「二重手術」「「鼻形成」「豊胸」「脂肪吸引」「皺除去」に加えて、春からは、健康保険の対象外治療(自費診療)としての美容目的のすべての整形治療、顎顔面矯正、美容目的での皮膚治療など課税対象に例外は設けない。

日本に比べ、圧倒的に安い治療費そして「ぜいたく税」の課税を回避してきた韓国の美容クリニックでは、とりわけ中国など海外からの患者誘致でその経営を潤わせてきたが、もはやその"特権"も手放さざるを得ない。「ビューティベルト」として500軒あまりが林立する激戦区・ソウル江南区では、「集患」にかけるネット広告などの宣伝費は、日本と変わらない。また不動産物件にかかる維持費は莫大なものになる。このエリアに開業するクリニックともなれば、月に何千万ウオン(数百万円)の宣伝費が出て行く。宣伝費に1億ウオン(約1000万円)以上をかけるクニックさえめずらしくない。

こうしたクリニック経営のためのイニシャルコスト(必要経費)は人件費も含め、年々上昇していくにも関わらず、今回の付加価値税導入が追い討ちをかけた。一方で「安さ」が売りの治療費を上げれば、「患者」は奪われるというジレンマに陥いり、勢い宣伝合戦はエスカレートしていくという構図だという。

度重なる医療事故やぜいたく税廃止は、韓国の美容医療業界にとってダメージは大きい。そして今回の広告規制のトリプルパンチで、マーケットに及ぼす影響は計り知れない。
市営地下鉄の駅のうち、当局が神経をとがらせているのが狸鴎亭(あっくじょんどん)と新沙洞(しんさどん)の駅構内に掲示される広告だ。江南区でも最大の美容整形の激戦区で、扇情的なキャッチコピーやBeforeAfter写真が少なくない。当局では、全広告物のうち美容整形の宣伝を20%以下に抑えるため、「症例写真が本当に当該クリニックで治療したものか?」、「修正はないか?」「キャッチコピーが容姿に対して強迫観念を煽っていないか?」などをチェックしていく。

(JHM120号より)

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