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「野放し」エステ脱毛に歯止めかかる!?

[ 2014/9/4 ]

日本エステティック機構(JEO)では、2008年からエステティックサロン認証制度を導入してきたが、エステサロンでの「脱毛施術」については業界のルールは徹底されていない。そのため医療行為にまで及ぶ施術が散見し、法令順守を求める声が高まっていた。こうしたなか、日本エステティック振興協議会が「美容ライト脱毛」の自主規準を定めたことで、脱毛機や施術者等が前述の自主基準を遵守しているサロンに対して、認証を付与していくという。実施は2014年6月から既存サロンを中心に順次スタートし、10月から新規サロンも受け付ける。

2012年、脱毛エステを中心に行っていた「ドクタータカハシ」代表を始め、経営幹部など含め8名が医師法違反、薬事法違反などの容疑で逮捕された。この事件で焦点となったのは、使用していた未承認の脱毛機が医療機器にあたるのか、またサロンで行われた脱毛の施術は医療行為にあたるかという点である。こうした脱毛エステ「ドクタータカハシ」の起訴に限らず、エステサロンにおける脱毛行為に対する訴訟は毎年繰り返されてきた。
最近では今年4月に、姫路のエステサロンが無資格の従業員に光脱毛をさせたとして逮捕され、5月に罰金100万円の略式命令が下っている。


日本エステティック進行協議会が「美容ライト脱毛」で自主基準

120号11面 写真 このような背景のなか、日本エステティック振興協議会(JEPA)が美容ライト脱毛(エステサロンにおける脱毛行為)の自主基準を作成した。
それによると、エステサロンが行う脱毛行為である「美容ライト脱毛」とは、「除毛・減毛を目的に皮膚に負担を与えず毛の幹細胞を破壊しない範囲で、エステティックサロンで行われる光脱毛」と、定義している。
周知のとおり、厚生労働省が平成13年11月に、脱毛行為のうち「レーザー光線又はその他の強力なエネルギーを有する光線を毛根部に照射し、毛乳頭、皮脂腺開口部等を破壊する行為は医療行為」であるという内容の通知を発表した。これによってエステサロンはこの通知に違反しない範囲で脱毛行為を行わねばならなくなった。しかし、半ば「野放し」状態のエステ脱毛にあって、毎年違法行為を承知で脱毛施術が繰り返されてきたことは先述の通りだ。
そして今回はさらに、業界やユーザーの安全確保のためにエステサロンでの脱毛行為である「美容ライト脱毛」における自主規準を定めることになった。
制定の目的は2つある。

1つ目は「美容ライト脱毛は医療行為と異なる」ということをサロン当事者はもちろん、施術を受けるユーザー、医療機関、そしてマスコミ全員が認知できるようにするためだ。医療行為によるアンチエイジング治療とサロンでのフェイシャルエステが異なるように、脱毛も医療機関とは別であると明確にするためだ。

2つ目が、万が一事故が起きた際の責任の所在の明確にするためだ。例えば「フグ調理には都道府県によるふぐ調理師試験において免許を取得した者しか行えない」という明確な基準があるため業界全体の問題にまでは広がらない。その一方で、ユッケ食中毒事件(腸管出血性大腸菌O111による)のように、業界でのルールが明確化されていなかったため死亡者まで出してしまい、その後の焼き肉店への風評被害にまで発展したと関係者は話す。
認証の際の申請要件は、①十分な知識と技術を持った技術者 ②安全な脱毛機 ③適正な環境での施術 ④経営者・管理者の法令順守 の4点だ。
施術者については、日本エステティック振興協議会が「美容ライト脱毛教育制度」を実施し、安全講習会や認定美容ライト脱毛エステティシャン講習会などを行い、スキルにあわせた研修を実施する。また機械に対しては性能、安全性などに基準を設け、一定の基準を満たしたものについて「適合審査証明書」の発行を行う。


『除毛・減毛目的に皮膚に負担を与えず……』の定義に曖昧さ否定できず

こうした動きに対して、エステサロン側の反応はどうか?
これらの団体が声高に「エステの場合は(脱毛ではなく)除毛、減毛行為である」と言っても、大手脱毛サロンをはじめとする広告やプロモーションに変化はほぼないと業界関係者は話す。事実、大手エステサロンの中には、表立っては「格安な金額で、何度でも脱毛します!」と毛がなくなるまでサポートするかのような広告を出しているものの、訴訟のリスクを考えて「半年後に毛はほとんど再生する」という真逆のエビデンスを取っている会社もあると聞く。
今回の自主基準設置がどの程度の影響力を持つのか疑わしい。そもそも美容ライト脱毛と医療脱毛の違いが未だ明確ではないからだ。安全講習会や認定制によって、施術者のスキル向上をはかったとしても、適正なエステ向け脱毛機器の基準、言い換えればその基準がなぜ?『除毛・減毛を目的に皮膚に負担を与えず毛の幹細胞を破壊しない範囲での脱毛』になるかがわからない。

とりわけ不信感を抱かせるのは、エステ業界の悪しき商習慣である。認証をとったサロンはまだしも、認証をとらない、あるいはあえて取得せず、平気で違反行為を続けるところが必ず出てくる可能性は否定できない。場合によっては、手前味噌の認証を宣伝に利用して消費者を惑わすところもあらわれるはずだ。
ひるがえって、エステティシャという技術資格そのものが、国家資格ではなく、さまざまな団体からの任意資格であることから、業界に認証制度を周知徹底することは〝至難の業〝と言わざるを得ない。


ドル箱「脱毛施術」脱皮して、新たな施術、サービスの提供こそ求められる

脱毛施術がエステ業界のドル箱であることは否定できないが、『除毛・減毛』などと苦し紛れのロジックを使うことよりも、この際、業界が早く脱毛行為から脱皮して、医療では及ばないエステならではの新たな施術、サービス、癒しの提供を見つけたらどうだろう。
そして、「この施術者なら安心して任せられる」「この人なら私の美容と健康管理にお金を払っても無駄ではない」という、エステティシャンが陸続と業界に生まれることを願ってやまない。

(JHM120号より)

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