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TPP幹細胞治療の推進に影落とす

[ 2013/8/22 ]
法案急ぐ「再生医療安全性確保法案」で、高いハードル
GMP基準が追加、外資・製薬メーカーに主導権!?

クリニック併設の幹細胞治療や、医療連携に急ブレーキ
成長見込むツーリズム市場は一転、海外に逃げる

 再生医療推進法の成立に続き、新法として今秋の国会で法案通過が見込まれていた「再生医療安全性確保法案」(一部、薬事法改正)は、ここにきてその内容を巡って、当初盛り込まれていたクリニック併設の幹細胞療法の実施基準が、一転して高いハードルを設けたことが明らかになった。
8月初旬に開催されたJAASのセミナーで明らかになった。クリニック併設型の幹細胞培養施設については、原案の届出制を担保してはいるが、CPC基準をより厳しくしつつGMP基準に準拠する施設とした。さらに二次救急医療機関に限定する意見も盛り込まれそうだ。

また、海外の培養施設も日本と同等の基準とプロトコルを要求しているため、バンキングした幹細胞を持ち込んで海外の患者を日本で治療を受けさせる、いわゆる「海外医療ツーリズムの逆輸入」にも影響は避けられない。
当初、5月末に閣議決定した法案内容から、一転して規制強化にハンドルが切られた時期が、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)交渉と並行して行われる日米の二国間協議がスタートした7月中旬と符合する。
そして同時期に開かれた審議会での議論において在日本法人をもつ外資系大手や国内最大の製薬メーカーがGMP基準を満たす培養施設の提供と幹細胞ビジネスに名乗りをあげてきたことが、その背景にあるとみて間違いない。成長戦略の一つとして再生医療分野を育て、日本が国際競争力に勝てる手立てとして規制緩和と事業への参入を促進させる、とした安部政権だが、市場開放が迫られるTPP交渉の中で、アメリカ側の要求に一部、歩み寄りをみせざるを得ないことから、外資大手への門戸開放を示したとみる向きがある。

 また、安部首相肝いりの産業競争力会議で国内最大手の製薬メーカー社長が有識者委員のひとりであることも、今回の突然の法案内容の変更に影を落としていることは疑いがない。法案は、当初の今秋国会での審議、成立からずれ込み厚労省の審議会で12月まで法案骨子の議論を断続的に積み重ね、来年には成立させるという。成立した再生医療推進法案の骨子には『国民が迅速かつ安全に再生医療が受けられるための総合的な推進に関する法案』とある。
そのために一部の規制を緩和し事業への参入を促進する、としていながら、幹細胞のビジネスモデル形成のハードルは限りなく高い。このままでは、製薬大手を除き、幹細胞治療参入の道は閉ざされる。つまりクリニック併設の幹細胞培養施設は、夢のまた夢で終わる公算が大きい。いま治療を受けている患者もまた、この法案が通った場合、多大な治療コストがかかる。何よりも現在稼働するすべてのクリニックが基準を満たすことができずステムセル療法のクリニックは閉鎖に追い込まれ、患者も当面治療は受けられない。分業制という建前論を振りかざして、医師の裁量権を狭め、幹細胞治療の主導権を製薬メーカーにもっていくことは明白だ。

2050年には50兆円を超えると予測される再生医療市場にあって、その臨床応用に最も近いとされる幹細胞療法では、海外の患者誘致をする医療ツーリズムの市場性は限りなく大きい。このままでは、日本の患者のみならず、海外からの患者も他国に逃げていくことは免れないだろう。
(以下、本文はJHM112号に掲載中。JAAS会員には毎号お送りしています)


(JHM112号より)
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