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第8回JAAS医科・歯科連携解剖学実習 [JHM]

[ 2011/12/27 ]


JAAS主催による「歯科インプラント・顎顔面解剖実習」が、9月17日(土)‐19日(月)の3日間、中国大連のHoffenBio解剖施設(JAAS提携施設)で行われた。過去7回、美容外科・形成の解剖実習としてミッションを組んできたが、このトレーニングでは初めて歯科口腔に焦点をあてた。

指導医には歯科インプラントの世界では著名な米国P.Moy博士の愛弟子として知られる、尾崎クリニック院長・尾崎 雅征DDSに加え、阪大形成外科・美容医療学教授の高田 章好MDも随行する“豪華キャスト”となった。高田教授は、歯科インプラントにおける額・顔面解剖の必要性から、形成外科医としてのコーチングを任された。また急速に高まるデンタルクリニックの美容医療の併設の動きを受けて、術者ではないが、歯科医もまた美容形成のテクニックを勉強する必然性は否めない。こうしたことから、高田教授が解剖学の講義・実習で美容形成で最も頻度の高い、「眼瞼形成」「鼻形成」「フェイスリフト」の執刀デモを参加者にみせた。

参加した歯科医は10名と少なかったものの、全員から「従来の歯科解剖のコンテンツとは明らかに違い非常に勉強になった」、「インプラント治療の技術はもちろん、口腔内ではない外側からの解剖アプローチを学べたことは大きい」など評価は高かった。また類似の解剖実習に参加経験をもつ歯科医からは、「寄贈された献体の保存状態(Fresh Cadaver)は今までで最も良かった」として、次回行われるJAASのトレーニングには、さらに仲間を増やし参加したいという声もあがった。

実習日の前日、講義による予習が行われたが、まず尾崎講師が、歯科医を取り巻く厳しい医療環境の現状とその方策を概説した(前号3面にて同歯科医の投稿記事に詳細)。この中で、「歯科医師誰もがその打開策を、自費診療であるインプラント治療に求めてきている。しかし、顎骨に直接金属を植立させるような従来の治療とは比較にならいない程の正確さ、緻密さが求められる治療法でもある」と指摘。そして現状は安易に用いられている事が多く、その結果、色々なトラブルが生じていると、歯科業界に苦言を呈した。

次に参加者には、患者の術前の歯列及び欠損症例を提示して、診断・治療方針の模擬試験を投げかけた。そして結論は、「難しいケースでは安易にリスクを侵さず、治療計画を決める」ことが重要だと力説した。またあるインプラントの医療事故を示しながら、インプラント埋入手術はメスによる切開を行ない、骨を削除し、金属(インプラント)を埋入するため、医科の手術と何ら変わりがなく、血管、神経などを損傷しないことが鉄則であると強調した。

この講義がまさに、今回の解剖実習になぜ、高田教授が指導医として参加し、医科歯科連携のトレーニングを行うか?の回答が凝縮されている。参加者にとって、『顎・顔面のオペを行なう医師が知っておくべきことは、インプラントオペをする歯科医師も知っていなければならない』ことが実習前日に明確になったようだ。
講義後半では、高田教授が歯科に必要な形成医からの解剖学を講義した。
翌朝、ミッション団はHoffen施設に再度、ホテルから向かい、午前、午後と2人の指導医のもと、歯科インプラントの解剖トレーンングと治療テクニックを学ぶことになる。

当日は提供されたご遺体に全員黙とう後、解剖実習に入った。尾崎講師そして高田講師がまず、基本的な上顎骨、下顎骨の解剖構造を実際のCadaverを使って公開、歯科医でも知っておかなければならない軟組織中の重要な血管・神経についてコーチングした。その範囲は外頸動脈、舌動脈にまで及んだ。

次に、ノーベルバイオ製のエンジン、バーそしてダミーの人工歯根を使って、実際のインプラントトレーニングに入った。とくに要望が高かったサイナスリフトについては、尾崎講師と共に、高田講師が上額洞の解剖的な確認を外側から切開してみせる場面もあり、参加者からは関心を集めた。また口角を切開し、口腔を広げた上で「上顎骨が薄くインプラント埋入が難しいケース」について、頬骨まで突き抜けてしまうリスクを解剖構造を直視しながら指導された。

午後からは献体1体に対して2名が共有しながら、各々の実習目的を果たす。歯科医としてまだ日の浅い参加者には、経験者がインプラント治療におけるドリルの選び方、進入角度、メスの入れ方などを教える光景もみられるなど、この解剖ミッションでの参加者間の絆の強さが感じられた。

解剖実習の合間には、高田医師による美容形成のデモも行われ、歯科医として初めてみる美容解剖に目を見張っていた。
前夜に続き、夕食を共にしながらの懇親会がこの日ももたれ、最後に両講師からは修了証が授与された。

尾崎講師からは「十分な解剖学的知識なしの歯科医師にはインプラントオペをする資格はないと言ってもいい。ぜひ皆さんが、周りの先生方にこの鉄則を教えてやってください」と話し、交流会を終えた。

JAASでは来年、6月に2回目の歯科インプラント解剖を実施する予定で、インプラントの基本となるオペ手技の実習(基本的な埋入、抜歯即埋入、サイナスリフト、下歯槽管移動術、インプラント埋入、ボーングラフトのための骨採取、ボーングラフトなど)に加え、形成・美容外科の執刀見学ももちろん組み込む計画である。


(JHM102号より)
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