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マイタケ由来「グリスリン」抗PCOS作用、確認 [JHM]

[ 2011/11/7 ]


最近、食卓にはあまりお目にかからないマイタケだが、早くからその機能性・有効性が研究されてきたことを知っているだろうか?とりわけアメリカではACAM(米国補完代替医療学会)、A4M(米国アンチエイジング学会)など先進的な医学会で、そのエビデンスが報告され注目を浴びてきた。なかでもベータグルカンを主な物質とする機能性成分「D-フラクション」、たんぱく質で構成されるグリコプロテインから見出された「グリスリン」は、マイタケ由来の2大有効成分として知られるところ。前者は免疫賦活の有用性をもち、後者はインスリン抵抗性を改善するとして、その研究報告は少なくない。そして昨年からとくに着目されてきたのが「グリスリン」の抗PCOS作用で、不妊に悩む女性の“福音”となる可能性をもつ。いち早く薬用キノコ・マイタケの有用性を突き止め、原料素材の研究開発、サプリメントの製造販売を続けるMushroom Wisdom社、そして日本法人のサンメディカ(http://www.d-fraction.co.jp)では、すでに国内の産婦人科医にグリスリン配合のサプリメントを紹介。不妊治療を行うGynecologistらから診療での取扱い依頼が舞い込んでいる。

生活習慣病、たとえば高血圧、高血糖、高脂血症などのメタボリックS発症のカギとなるのが、インスリン抵抗性の関与だ。その改善こそが「現代病」を克服すると言ってもいいだろう。
インスリン抵抗性が原因で引き起こされる疾患には、その他糖尿病、がん、認知症、アルツハイマーなどと数えればきりがない。しかし糖尿病を治すために血糖値を下げる薬剤の中には、長期の服用によって逆にインスリン抵抗性を上げてしまうという事例もように、時として薬剤はもろ刃の剣ともなることは臨床の現場では知らない医師はいない。

そんな厄介な「インスリン抵抗性」が関与する疾病にもう一つ、不妊症がある。
不妊症の原因の一つといわれるPCOS(多のう胞性卵巣症候群)は、月経の異常、卵巣の多のう胞性変化さらには性ホルモンの異常を特長とする婦人科疾患で、生殖年齢にある女性の5〜10%にあたり患者数は多い。

不妊を主訴とする患者には排卵と妊娠を誘発させるため、酢酸クロミフェン投与が第一の選択しとなる。また症状によっては腎皮質ホルモン剤、抗プロラクチン剤なども併用される。こうした治療が奏功しないケースではゴナドトロピン療法や、腹腔鏡下卵巣焼灼術、さらには体外受精へと選択しは広がる。しかし、こうした治療法には課題も少なくない。
クロミフェン療法では排卵効果が高いものの妊娠率に劣る。ゴナドトロピン療法は多胎妊娠など重大な副作用が伴う。焼灼術はその効果が限定的で、何よりも入院、手術の負担がかかる。体外受精に至っては、さらに高いコストと患者自身の道徳的な抵抗感が否めない。

こうした中で、「インスリン抵抗性」の改善作用をもつグリスリンが不妊症に対して期待され、臨床試験が開始された。金沢での日本生殖医学会で初めて発表の場を与えられたことがきっかけとなり、PCOSに対する臨床データを積み重ねてきた。
中でもロマリンダクリニック(富永 国比古医師)で行われた臨床試験が興味深い。PCOSと診断された30名の女性患者(21〜37歳)に無作為にグリスリン錠投与群と漢方薬の芍薬甘草湯群で、その有効性をみている。

15例には錠剤9錠/日(グリスリンとして207mg/日)、15例には芍薬甘草湯を7.5g/日、3か月にわたって両群とも投与された。患者らには普段と変わらない運動や食生活をするよう指導したことは言うまでもない。また、服用中、有害事象は一切なかった。
その結果、周期別の排卵率はグリスリン群で45生理周期のうち22周期(49%)で排卵を認めた。漢方群では39周期のうち6周期(15.4%)で排卵が認められた。この差は統計学的にも有意差をもつ。
また症例別の排卵率でも、グリスリン群が66.7%に対して漢方群では30.8%とグリスリン群が高い割合を示した。

因みに排卵の有無は、基礎体温から判断し、必要に応じて経膣超音波検査で確認している。また血液生化学検査も投与前と3カ月後に検査データとして確かめている。その結果、グリスリン投与群でE2(エストラジオール)及びE2/T比が有意に上昇し、LH(黄体ホルモン)も低下傾向を示した。
肝心のインスリン抵抗性との関係性については、HOMA-IR(インスリン抵抗性の指標)の値が2を上回る患者では、排卵率が高い傾向を示し、不妊とインスリン抵抗性との関係が示唆された。
主治医として関わった富永医師は「何より治療薬と異なり副作用の心配がグリスリンにはない。PCOSで悩む女性の治療の選択肢のひとつになりえます」と、不妊症への手ごたえを語る。
こうしたエビデンスを学会などで知った、不妊治療を行うGynecologistらからは、診療での取扱い依頼が最近、数多く舞い込んでいる。

その中の一人、秋山レディースクリニックの秋山芳晃医師は「PCOSの一般不妊治療の場合、安全な範囲で排卵をさせてあげなくてはなりません。だから、比較的卵巣への刺激が低いクロミッドやFSHの注射を少量づつ打ったりするのが基本です。しかしグリスリンのようなサプリメントならさらに副作用にないため、併用するかたちで患者さんに治療を行っています」として、グリスリンの導入を決めた一人だ。
さらに、グリスリンを治療の中で処方するという藤野婦人科クリニック・藤野 祐司医師は、やせ型PCOSの改善に期待する。
「日本人のPCOSの約半数はやせ型の患者さんです。肥満型と比べて、やせ型のPCOSでは有効で副作用の少ない治療法に悩むんです。副作用が少ない食成分由来というグリスリンには期待しています」という。

いま、こうした医師たちの協力を得て、グリスリンはさらなる臨床データを集めている。
不妊に悩む女性の“福音”となるのか?グリスリンのさらなる臨床成果が待ち遠しい。


(JHM101号より)
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