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2010年美容医療・アンチエイジング市場は?そして今年を占う (上) [JHM]

[ 2011/1/17 ]
長期低迷がつづく日本経済、市場はデフレスパイラルから抜け出せない。そして購買力はますます弱まる傾向にある。美容医療もまた例外ではない。本紙の取材網としてたびたび報じている韓国ではその経済成長ぶりや、活発化する医療ツーリズムを受けて美容医療業界も上げ潮ムードだと思われるがちだが、決して好調というわけではない。美容整形を受診する裾野は日本より広いが、以前に比べ需要の伸びが鈍化していると聞く。評判のいい医師たちは、月曜から金曜は国内で、週末はその技術を見込まれて中国へと「出稼ぎ」に行く。またソウルなど都会では、競合激化とテナント代など固定費の高さから収益性が思いのほか悪く、地方へとクリニックを移転する美容形成医もあらわれている。一方、日本でも内需から外需へと一部転換しようとする動きもあり、海外からの患者誘致の取り組みや、巨大市場Chinaにクリニックを進出させる大手美容外科も現れてきた。果たして国内の美容医療、アンチエイジング外科・内科の市場は先細りになっていくのだろうか?本紙では潜在需要はまだまだあるとみている。その動向を2010年に探りながら、今年2011年の業界の行方を占っていく。今回そして98号の次回と2回にわたり連載していく。連載(上)では、市場全般の傾向を総論として述べてみる。

医療事故教訓に技術の研さんを


ジャパン・シンドローム!低迷する日本経済を象徴するこの言葉、レスター・ブラウンが命名したものだ。工業化社会を走り続けた末の日本の負の側面を、食糧自給率、労働生産人口の減少と高齢化社会そして環境問題などのテーマで論じたもの。こうした負のスパイラルによって日本の経済成長を止めさせ、デフレ構造から抜け出せないといういわゆる「日本病」を取り上げながら、世界の先進国そして新興国(経済発展を続ける中国はその人口を養うため穀物の70%以上を輸入に頼っている)にも向けてその教訓に学ぼう!と警鐘を鳴らしている。
その方策は読者それぞれが博士の本を一度読んでいただきたいが、日本の現状はいうまでもなく“病気”に侵されているから、マインドも冷え込む。そしてデフレ経済は当然のように市場から購買力を奪う。
同じように美容医療もまた例外ではない。
昨年、業界では医療事故がつづいた。レーシック、脂肪吸引、インプラントと美容医療そして美容歯科に寄せられる社会的な信頼は揺らぎかねない。「当たり前」であるはずの手技なのにミスを侵した末の事故。また医療人としては常識であるはずの「衛生管理」上の手落ちから失明事故に至った。
美容業界は景気に影響されないという過去の通説はもう“伝説”になってしまった。そして追い打ちをかけるようにこうした一連の医療事故である。
要因は美容外科医の経験の未熟さであり、その背景には技術の習得する場がないことだろう。美容外科をきちんと学ぶ大学がないなか、「学び舎」を求めて、美容大手などに勤務しながら経験を積む。しかしプラーベートクリニックは経営を優先しなければならず、取得できる治療範囲は限られる。経営上、稼働効率を優先しリスクの高いオペは敬遠される。だから治療を任せることができない。やれなければいつまでたっても覚えられない。結果、侵襲性の高い施術ができる美容外科医が少なくなっていく。


侵襲術知れずして低侵襲の治療はやれない

「侵襲術を知らずして、プチ整形など低侵襲の治療はやってはいけない」と言われるように、簡単な手術でさえ一歩間違えばクレームの対象になるミスを侵す。解剖学など基本を押さえておくことが重要といわれる理由だ。
「美容外科、形成術で切開法はもはや需要が低い。患者さん側の問題ではなくいかに供給側の医療サイドが需要をつくる努力をするかです」と、指摘するのは小木曽クリニックの小木曽祐一医師。美容医療を始めた30代、40代の若手医師に自ら買って出て、JAAS日本アンチエイジング外科・美容再生研究会を通じて、スクールを開校した。美容医療業界がもっと、後継のために多くの施術をOPENにして教えていかなければならないという。それが、業界全体のレベルアップと発展につながる。
美容医療、アンチエイジングへの需要は、供給者(医師)からつくりだす。2011年、こうした努力が求められる年になりそうだ。
とはいえ、景気低迷は美容医療にかける出費もまた抑える傾向にある。そこでクリニックでは治療費をさげる。自ずと一人当たりの単価はさがり、勢い治療メニューを増やさざるを得ない。そこには医師の勉強とそして投資がかかる。だが経営上ますます無駄な投資は控えることになっている。一台1000万円、2000万円もするフォト、レーザーなどの美容医療機を次々と揃えてきた全盛期はもはや過去の話。導入する装置にかける投資額はできるだけ安く、そして治療効果のさらに高いものを求める傾向に。
なおかつ消耗品などイニシャルコストもクリニックでは抑えることは言うまでもない。


美容医療の世界市場日本は4位と大きい



美容整形・外科術で最もスキルを要する切開法はともかく、そうではない新たな術式や療法を学び、治療をスタートしたい、という動きは少なくない。しかしその施術のための機械、資材などの投資額に対して治療収入がどれほど見込めるか?同時に、医師一人(場合によっては看護補助と二人、麻酔専門医と3人)が治療で拘束される時間というコストも考えなければならない。非切開法や比較的時間のかからない切開法では、1時間を超える手技は敬遠されるケースが少なくない。多くが一人の医師で美容医療あるいはアンチエイジングクリニックを支えているため、患者予約をいかに効率的に一日の稼働枠に収めていくかが求められる。これからは、1回の施術にかかる経費の10倍が治療費の目安で時間も1時間を超えない範囲、できれば30分から40で済むことがベストだ。
一方、美容医療・アンチエイジングの分野に、保険診療から転身あるいは一部の診療を取り入れていこうとする、他科からの医師は今年も急増することが予想される。その根拠は、本紙の3面・提言ページの山本クリニック院長・山本 豊医師の論説をお読みいただきたい。
こうしたなか美容外科、形成クリニックの月収は5000万年、6000万円という全盛期の勢いはもちろんない。せいぜい流行って2000万円、3000万円だろう。
しかし数をこなすあまり粗診粗療になり、クレームを抱えてしまうより、丁寧にある程度時間をかけてやることが今求められている。経営との狭間でいかにバランスよく良質な美容医療をやっていくかが問われる時代に入った。
世界の中で日本の美容医療に対する需要はどのくらであろうか?
少し古い統計ではあるが、美容整形の市場順位は、一位がアメリカ、2位がメキシコ、3位ブラジルと続き、日本は4番目につける。最新のデータでこの順位に変動はあるものの、日本マーケットが閉そく感を持ち続ける中、美容医療はまだまだ潜在需要が見込めるはずだ。


成功するクリニックのパターンには

美容医療で成功するクリニックにはいくつかのパターンがある。
その医師の得意技で勝負する。たとえば眼瞼、フェイスリフト、鼻形成、輪郭形成術、脂肪吸引、豊胸術などや美的センスを要求されるフィラー術でもいい。その腕が患者から評価され、リピータそして新患が増える。もちろんそうした医師は、一通りの治療ができることはいうまでもない。
都心から少し離れた場所に開業して、安めの治療費を設定する。眼瞼形成での切開法で都心で二十万円台後半が当たり前のところを、場合によっては十万円で行う。何よりテナント代など固定経費を抑えられることから、収益性はあがる。
また地方で勝ち組になる。都会でもまだ導入するところが少ない新しい施術をこなし、価格は都会よりは安めにする。大都市圏に比べ競合するクリニックも少ないため、市場が小さくても患者は集中する確率は高くなる。
もちろんこうしたクリニックでも、医師の高いスキルが必要となることはいうまでもない。
2010年本紙でも何度か取り上げた美容内科、アンチエイジング内科でのメニューは今年も“進化”したかたちをとりながら、採用するクリニックは広がりをみせると本紙は予想する。
今では知らない医師はいないと言われるほど、治療術の一つとして実践される高濃度ビタミンC点滴そして、血液オゾンクレンジングやUV照射による血液フォトセラピー、さらには過酸化水素水そのものを点滴として体に入れてある種の酸化ストレスを与えながら逆に抗酸化療法としての治療効果を出す、という療法は今年も広がる。
血液オゾン療法は、昨年から美容医療、そして歯科にまで導入が始まり、治療というよりむしろアンチエイジングとしての体感で患者からの支持を得ている。医療用酸素を使いオゾンジェネレーターさえあれば、医師そして看護師にも使えるため、手を出しやすい。ジェネレーターと附属品、酸素などが経費負担となるが、都心の相場2万円〜3万円の治療費をとれば導入後100人の患者で減価償却は終わる。


保険医が入りやすい治療術は注射術

内科系の医師が自由診療として比較的入りやすいメニューでは、プラセンタ注射やにんにく注射などの注射術。またヒアルロン酸やPRP、PPPプラズマフィラー、レディエッセなどフィラーやBOTOX注射などの美容医療術の入門コースといえる。プラセンタやBOTOX製剤はその適用で、一部保険がきくため美容に縁のない医師でも安心してやることができる。始める医療機関は年を追うごとに増えており、今年もその動きは加速する。
そして、こうした簡単そうに見える施術も、理論と施術の講習、トレーニングを怠れば、事故の元になる。
くれぐれも導入する前は、信頼できる指導医に習うことをお勧めしたい。
メディカルエステを併設する医療機関やデンタクリニックもまた今年は増えそうだ。エステティシャンや看護師がこの部門に精通すれば、医師が自らの診療を有効に使うことができる。熟練のエステティシャンを週何日か雇うだけで、クリニックの収入が大きくあがったところもあるくらい。都心の美容皮膚科には、医療フロアとエステのフロアを分けてはいるが、VIPの患者に対してはクリニックで点滴を受けてもらいながら、エステの施術を治療中に行う。
医療という痛みを伴うイメージをエステによって少しでも払しょくし、癒しの空間を演出すれば患者からの支持は高まる。
また注射術と共に、美容医療、アンチエイジング医療の勉強を始める保険医で常に関心が高いのが「サプリメント外来」だ。詳しくは次号でその内容を述べるが、血液検査による診断、カウンセリングをすることによって、より信頼度の高い栄養指導、サプリメント指導が可能だ。そのクリニックが信頼されれば後は、患者がリピーターとなり受付の対応だけでコンスタントに物販が進む。


こうした院内物販で今や常識となったのが、化粧品である。美容医療ではとりわけオリジナルブランド、ナショナルブランド共に、レセプションに置かれていないクリニックはないほどで、治療単価が下がる傾向にある最近では、クリニックの物販収入はバカにできない(次号にてさらに詳しく掲載する)。
歯科経営が苦しいと言われる。審美歯科そしてインプラントなど今や競合の時代に突入し、価格破壊さえ起っているようだ。
しかし点滴、血液オゾン、サプリメント外来などの新たな歯科治療としての付加価値を見出しているところもある。一昔前の“歯を抜く時代”からいかに現役の歯を残すか、という今日、予防歯科診療へと向かっていることはいうまでもない。とりわけ歯科治療で大きなテーマとなる歯周病への対応が求めれており、Yagレーザーを使った新たな治療術など開発され始めている(JAASでは今年この分野のLiveを計画している)。
一方、一昨年後半歯科医に向けて投げかけられてきた、ヒアルロン酸による口唇周辺の治療は、歯科治療が要因となるシワなどであっても、口唇外側は医科の範囲とする見解が一般的で、歯科治療の範囲からはずれる。とりわけ、形成系の医師からの具申もあり、昨年後半そして今年と、アプローチする歯科医は少なくなる。(上)了

○次号の(下)では、美容医療、アンチエイジングにおける治療、診療、施術内容を具体的に紹介しながら、クリニックそして歯科、エステサロンが患者を獲得していくためのヒントを投げかける。


(JHM97号より)
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