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人工生命体の完成まで、あと一歩か [JHM]

[ 2010/7/5 ]
先日、合成したDNAによって、細菌を生存させることに成功したことが、米科学誌サイエンス電子版に発表された。発表を行なったのは、米国メリーランド州のヒトゲノム計画で著名なJ・クレイグ・ベンター研究所。

人工の生命体の完成まで、あと一歩というところまで迫ってきている。同研究所は、こうした人工の細菌によって、ワクチンなど医薬品の開発や効率的な生産に役立てることを目的に研究を行なっている。

一方、再生医療で最先端とも言うべきiPS細胞から内耳の有毛細胞を作り出したことを米国スタンフォード大のグループが米科学誌セルに発表に発表を行なっている。

内耳の有毛細胞は、音などの空気の振動を繊毛の動きによって電気信号に変換し、神経細胞から脳へと伝達する、聴覚やバランス感覚に非常に重要な細胞。この細胞が損傷することが、難聴の大きな原因となっている。他の感覚細胞と比べ、約3万個と少なく、加齢や騒音、医薬品の副作用によって損傷すると再生されず、難聴などの症状となって表れる。

報告されたスタンフォード大の研究は、マウスの皮膚由来のiPS細胞に特殊なたんぱく質を加え、様々な条件下で培養を行なった結果、有毛細胞に似た構造を持つ細胞が出来、この細胞内では有毛細胞に特有の遺伝子発現がみられ、刺激に反応し電気信号を発していることが確認されたという。

また、同研究グループはES細胞からも有毛細胞の誘導に成功している。
こうした組織の再生については、前号でも奈良県立医大がiPS細胞から腸の細胞を誘導することに成功したと伝えたが、望む細胞の誘導が様々な組織の細胞で可能になってきており、実用化にますますの期待がかかる。

また、再生医療として最も現実的なものとして生体材料の開発がある。生体材料は、火傷や外傷によって欠損した皮膚や骨、軟骨の土台となる物質。
金沢工業大学はカニの甲羅などから抽出されるキチンやキトサンをナノレベルに粉砕し、有機溶媒を用いずに使用できる生体材料の開発に成功したという。
これまでの生体材料はキチンを酢酸やエタノールなどを用いて溶解しており、有害物質の残留が懸念されていたが、同大の研究では、キチンやキトサンと水のみを用いており、有機溶媒残留のリスクは低い。

また、生体適合性は従来のものと比較して5〜6倍も高く、薬剤の浸透性も高いという。同大は最終的に指の再生を目標としており、手始めに1、2年後を目途に皮膚再生の材料としての実用化を目指している。

こうした技術が実用化され、総合的に行なわれることで、欠損した組織や臓器の再生につながる。まさに生命の創造の前夜とも言える時代が到来してきているといえよう。



(JHM94号より)
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