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[JHM] 福島県立医大の混合診療問題

[ 2009/1/7 ]
研究費名目の寄付
金で診療費を徴収



今年10月の終わりに、大動脈瘤の治療を受けた患者30人から福島県立医大付属病院は、保険適用外である材料費を研究費名目の寄付金として受け取っており、東北厚生局が混合診療の疑いがあるとして調査に乗り出すというニュースが報道された。
福島県立医大病院では、大動脈瘤の破裂を防ぐ治療について、保険外である人工血管(ステントグラフ)の材料費を研究費から支払ったことにし、患者から寄付金を受け取っていた。これを受け、東北厚生局が混合診療の疑いあると見て調査に乗り出すという経緯だ。
ステントグラフ治療は1994年頃から始まり、2002年には手術手技料が保険適用にはなっているが、材料費はいまだに一部適用外である。手術手技は保険で認められているのに、その材料費は認められていないというのは変な話であるが、保険が認められるまでに時間がかかるという日本のシステムが大きな壁として立ちはだかっている。
そもそも、混合診療の禁止が違法か否かという問題では、昨年11月に神奈川県内のがん患者が国を相手取った訴訟の判決で「混合診療を禁止する法的な根拠はない」とする判決を出しており(国は控訴中)、政府の規制改革会議は同年12月に範囲を拡大するよう答申している。
混合診療問題に関して 国は、混合診療を認めると、高価な治療・検査や効果が疑わしい治療が横行したり、患者の経済力で受けられる医療の質に差が出るなど、患者負担が増すと指摘するように、“患者のため”に混合診療を禁止しているのだが、それが本当に“患者のため”になっているのだろうか?
今回のケースに限って言えば、ステントグラフの材料費として50万円強を研究費名目で寄付しているが、この方式を採っていなければ材料費は数百万円に上ることもあるのだという。
同病院では約120人の大動脈瘤に対する治療実績があり、寄付に関する件についても患者の同意を得ている。
これらどちらが“患者のため”の医療であるのかは一目瞭然であるが、福島県立医大病院の関根 宏幸企画財務部長は弊紙の取材に対し「これまでのような研究費名目の寄付というようなやり方であると、誤解を招いてしまうので、現在はそのような方法はとっていないが治療は行っています。誤解を招かない方法は検討中ですが、一般寄付の形でと考えてはいます」とコメント。
一方、東北厚生局に調査内容を取材したところ、「個別の病院に対することなのでコメントできません。調査は終了しており、現在検討中です」とのことだ。
混合診療の疑いがあるとして調査に乗り出した際、何を調査するのか?という問いには「診療内容やレセプトなど請求内容を調査します」とコメントした。
混合診療を原則禁止と捉えるが故に起こった今回の出来事。判決は未決であるが、混合診療禁止の法的根拠はないことから、勇み足的な国の対応と言わざるを得ない。
この問題は、高度医療を行なう大学病院だけでなく、すべての形態の病院でも他山の石として傍観することなく、同様の問題として取り組んで行かなければならないのではないだろうか。
患者負担増を回避するという名目があるのであれば、患者の視点から混合診療のあり方を真摯に考えなければならず、今後の国の対応の変化を期待したい。




(JHM81号より)
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