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アンチエイジングEBMファイル-プラセンタエキス(胎盤抽出物・ラエンネック)の効能について

[ 2007/9/10 ]

プラセンタエキス(胎盤抽出物・ラエンネック)の効能について

日比野佐和子・同志社大学アンチエイジングリサーチセンター

要旨
プラセンタエキス(胎盤抽出物)にはアミノ酸、活性ペプチド、ビタミン、ミネラル、酵素、核酸、といった種々の生理活性物質が含まれていることが知られている。また、肝成長因子、神経成長因子といった生理作用の強い各種因子の存在も確認されている。今回の研究において、ラエンネック P.OR(内服)を使用し、アレルギー性結膜炎、マイボーム腺機能不全、重症ドライアイ症候群といった炎症性疾患への効能を検討する。これらの疾患の治療の中では炎症をコントロールする必要があり、その場合、現在、ステロイド以外に有効な方法がない。ラエンネックRの抗炎症作用が示されれば、ラエンネックRの投与により、患者のさまざまな眼症状が改善されることが期待される。本治療では、無作為二重盲検並行群間比較試験により安全性及び有効性を探索的に検討した。
 
緒言
ヒト胎盤抽出物を含有するラエンネックは実験的急性あるいは慢性障害に対する改善作用を有し、肝疾患治療剤として臨床に用いられている。ラエンネックのin vivo および in vitroにおける肝細胞増殖促進作用について、すでに報告されている。
胎盤抽出物を含有する医薬品であるラエンネックR(日本生物製剤)は、1959年より肝炎、肝機能不全に用いられている薬剤であるが、最近になり、アトピー性皮膚炎、神経痛、リウマチなどの痛みの緩和など、さまざまな疾患への効果がみられ、さらに抗加齢領域でも注目されている。
しかしこれまで眼科領域において、ラエンネックRの効用を検討した報告はない。
方法
対象:治療薬群 14名、プラセボ群 3名
治療薬群14名のうち1名は途中で脱落した。
自覚症状として、外刺激に対して涙が出ない;異物感;易疲労感;繰り返す眼の発疹;眼のかゆみ;眼脂過多;眼痛;及び灼熱感を有する患者13名に対し、その了解を得て、ラエンネック内服剤を夕食後に2錠毎日内服させた(ラエンネック群)。
一方、同様な自覚症状を有する患者3名にはプラセボを投与した(プラセボ群)。ラエンネックおよびプラセボの2群における経口投与による二重検法群間比較試験により検討した。28日間の連続経口投与が行われた。内服前、内服後2週ごとに30週までシルマーI法、涙液層破壊時間(BUT)、生体染色スコア(フルオレセイン、ローズベンガル)の評価を行った。
対象の患者はいずれも、ドライアイおよびマイボーム線機能不全症を有していた。
観察項目および測定法:
生体染色試験(ローズベンガル染色、フルオレセイン染色)1%フルオレセイン・1%ローズベンガル混合液2μlを用いて、角結膜を染色し、染色状態を図として記録するとともに、染色度をスコア化することにより調査票に記入した。
記録およびスコア化は可能な限り写真を用いて、客観的に行った。
1) フルオレセイン染色・ローズベンガル染色)
1%フロレセイン染色・ローズベンガル染色
角膜上皮、角膜中央部、角膜下部のローズベンガル染色度を3点満点でスコア化し、その合計点を評価とする。(計9点)より具体的には、ドライアイにおける角結膜上皮障害の評価にはvan Bijsterveld(Diagnostic tests in the sicca syndrome, Arch. Ophthalmol., 82:10-14, 1969)のスコアが用いられることが多い。耳側結膜、角膜、鼻側結膜の3つの現象で、それぞれ3点満点で合計9点満点として評価した。無染色が0点、一部染色が軽度で1点、2/3程度の染色性の場合は中等度で2点、全面に染色しているときは重度で3点となる。その一例を図に示す。



2) 涙液層破壊時間(BUT)
1%フロレセイン・1%ローズベンガル混合液2μlを用いて染色後、細隙灯顕微鏡により測定。涙液層の厚さは瞬目直後に最大となり、涙液は内下方に流れ、角膜上の厚さは除々に減少する。眼表面をおおう涙液層のかわく時間を測定する。正常は10秒以上である。5秒以下はドライアイの疑いとなる。
3) シルマー試験(第一法)
ワットマンNo41 ろ紙35×5mm使用。下瞼耳側にシルマー紙をかけて、5分間測定する。5分間でしみこんだ涙の長さを測定する。正常値は10mm以上である。
4) 蛍光色素試験
2%フロレセイン点眼後、生食点眼し、細隙灯顕微鏡で検査。
① びまん性表層角膜炎②点状表層角膜炎③糸状角膜炎のいずれを認めても本テスト(+)とする。
5) ローズベンガル試験
1%ローズベンガル液点眼後、生食点眼し、細隙灯顕微鏡で検査。
(−)染色されず、(+)眼瞼部のみ染色、(++)瞼裂部およびそれより下方球結膜の染色、(+++)上方結膜まで染色
6)結膜充血
下記のスコアにより評点する。
0点:全くなし、1点:少しあり、2点:ある程度あり、3点:多量あり
本診断における眼乾燥症状の自覚症状は次のとおり
1) 外刺激に対して涙が出ない。2)異物感 3)易疲労感 4)繰り返す眼の発赤 5)眼のかゆみ 6)眼のかすみ 7)眼脂過多 8)眼痛、灼熱感
結果
5例に服用により興奮し眠れないという訴えがあり、早めに内服に変更することで改善された。そのほか、特に副作用は認めていない。
3例中2例はアレルギー性結膜炎を伴っており、今回の内服を開始したことで、2週間後には自覚症状および結膜炎症状が改善していた(表参照)。
(表)
注:角膜上皮障害は、フルオレセイン・ローズベンガル染色、BUT及び結膜充血により評価した。
プラセボ群では全例において、BUT、シルマー値および生体染色スコアにおいて改善を認めなかったのに対して、治療薬群では13例中10例にBUTの改善を、13例11例にシルマー値の上昇を、13例中12例に生体染色スコアの改善を認めた。
結論 上記の表1に示されるように、ラエンネック内服は眼局所に働き、各種の眼疾患の治療に有効であることが判明した。特に、マイボーム腺機能不全及びドライアイの治療に対して有効であった。更に顕著に認められた所見としては涙液量の増加である。なお、自覚症状はラエンネック群の全員で改善された。また、この試験において、ラエンネック群に副作用は認められなかった。
筆者はさらに、ラエンネック点眼液の眼表面における影響についても、重症眼疾患患者に対して、検討している。今後、さらに、広い領域で、研究をすすめられることが期待される。
本検討項目も含め、ラエンネック(商品名)を有効成分として含有する眼疾患治療剤としての特許は国内および国際において受理申請済みである。

(Jaam5号から抜粋)
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